【高度人材ビザ】ポイント計算と優遇措置:永住権への最短ルートガイド

優秀な外国人材の獲得は、企業の競争力強化に直結します。また、日本でのキャリアアップを目指す外国人の方々にとって、高度専門職ビザ(高度人材)は、永住権への最短ルートを提供する特別な在留資格です。本記事では、経験豊富な行政書士として、この制度の全容、具体的な申請要件、そして戦略的な活用法を解説します。
高度専門職ビザとは?優遇される「特別な在留資格」
高度専門職ビザは、我が国経済の成長への貢献が期待される高度な能力を持つ外国人を受け入れ促進するために、平成27年4月に入管法改正により新設された在留資格です。この制度は、高度な能力を持つ外国人の受入れを促進するために、出入国管理上の優遇措置を講じることを目的としています。
この制度の最大かつ重要なメリットは、在留歴に係る永住許可要件の緩和です。通常、永住許可には長期間の在留が必要ですが、高度専門職として評価を受けた場合、その在留要件が大幅に緩和されます。
- 合計70点以上のポイントを獲得した場合、永住許可申請の在留期間要件が3年に大幅に短縮されます。
- さらに、80点以上を獲得すれば、最短1年で申請が可能となる「日本版高度外国人材グリーンカード」の対象となります。
高度専門職1号の3つの活動類型(イ・ロ・ハ)
高度専門職ビザの申請は、申請者が行う活動内容に応じて以下の3つの類型に分類されます。申請には、下記いずれかの活動でポイントを合算し、合計70点以上を獲得することが原則要件となります。
| 類型 | 活動内容(該当職種例) | 最低年収基準 |
|---|---|---|
| 1号イ | 高度学術研究活動(大学教授、研究者など) | 基準なし |
| 1号ロ | 高度専門・技術活動(エンジニア、コンサルタントなど) | 300万円以上 |
| 1号ハ | 高度経営・管理活動(企業の役員、経営者など) | 300万円以上 |
高度人材ポイント計算の具体的な仕組み
高度専門職ビザの申請では、申請者が持つ学歴、職歴、年収、研究実績・資格などの項目についてポイントを積み上げ、合計70点以上を目指します。
学歴・職歴
- 学歴は、博士号で30点、修士号または専門職学位で20点、大学卒業で10点が基本となります(1号イの場合、大学卒業は除かれます)。複数の分野で博士号や修士号などを取得している場合は、追加で5点が加算されます。
- 職歴(実務経験)は、従事しようとする業務に関連する実務経験年数に応じてポイントが付与されます。例えば、1号ロでは、10年以上の実務経験で20点、7年以上10年未満で15点が付与されます。
年収
- 1号ロおよび1号ハの活動を行う場合、最低年収は300万円以上が必要です。
- 年収額に応じて加算ポイントが設定されており、例えば年収1,000万円以上の場合、申請時の年齢に応じて35点から40点(1号イ・ロ)または50点(1号ハ)が付与されます。年収による得点は、申請時点の年齢によって加点対象となる最低年収基準が異なります。
| 年収(年額) | ~29歳 (15点) | 30歳~34歳 (10点) | 35歳~39歳 (5点) | 40歳以上 (0点) |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円以上 | 40点 | 40点 | 40点 | 40点 |
| 900万円以上1,000万円未満 | 35点 | 35点 | 35点 | 35点 |
| 800万円以上900万円未満 | 30点 | 30点 | 30点 | 30点 |
| 700万円以上800万円未満 | 25点 | 25点 | 25点 | — |
| 600万円以上700万円未満 | 20点 | 20点 | — | — |
| 500万円以上600万円未満 | 15点 | — | — | — |
| 400万円以上500万円未満 | 10点 | — | — | — |
| 注1:1号ロは年収300万円以上が必須要件ですが、400万円未満では年収による加算点はありません。 注2:表中の「—」は、その年齢層では当該年収額ではポイントが付与されないことを示します。 | ||||
| 年収(年額) | ポイント |
|---|---|
| 3,000万円以上 | 50点 |
| 2,500万円以上3,000万円未満 | 40点 |
| 2,000万円以上2,500万円未満 | 30点 |
| 1,500万円以上2,000万円未満 | 20点 |
| 1,000万円以上1,500万円未満 | 10点 |
| 注3:1号ハも年収300万円以上が必須要件です。 注4:1号ハの年収ポイントについては、年齢による詳細な得点変動は記載されていませんが、年収額に応じてポイントが付与されます。 |
| 年齢 | ポイント |
|---|---|
| 30歳未満 | 15点 |
| 30歳以上35歳未満 | 10点 |
| 35歳以上40歳未満 | 5点 |
| 1号イおよび1号ロにおいては、年収ポイントとは別に、申請時点の年齢に応じて以下の点が加算されます。 | |
研究実績・資格
- 研究実績としては、発明者として特許を1件以上取得している場合(1号イで20点、1号ロで15点)や、日本の学術論文データベースに登録された学術雑誌に掲載された論文(責任著者であるものに限る)が3本以上ある場合(1号イで25点、1号ロで15点)などにポイントが加算されます。
- 資格については、従事する業務に関連する日本の国家資格の保有数に応じて、1号ロで1つにつき5点(最大10点)、IT技術に関する告示試験合格または資格保有で15点(2つ以上で20点)が付与されます。
特別加算(ボーナスポイント)
- 日本語能力として、日本語能力試験N1取得者や外国の大学で日本語を専攻し卒業した者は15点、N2取得者には10点が加算されます。
- 日本の高等教育機関で学位を取得した場合や、法務大臣が告示で定めるトップ大学を卒業した場合にも10点が加算されます。
- 特定の成長分野の先端プロジェクトに従事する人材には10点が加算され、複数の修士号や博士号を取得している者には5点が加算されます。また、契約機関が地方公共団体から支援措置を受けている場合も10点が加算されます。
詳しくは、法務省の「ポイント計算表」をご覧ください。
ポイントシミュレーションの重要性
永住権獲得を目指す場合、特に80点以上を目指す際は、どの項目で加点が可能か、証拠書類が準備できるかを詳細に検討することが不可欠です。申請前に専門家と共に正確なシミュレーションを行うことが、最短ルートを設計する上での成功の鍵となります。
高度専門職ビザの優遇措置(7つの特典)
高度専門職ビザを取得した外国人材には、その能力にふさわしい、以下の7つの出入国在留管理上の優遇措置が付与されます。
| No. | 優遇措置の名称 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 複合的な在留活動 | 複数の在留資格にまたがる活動が可能(例:経営と研究の兼務)。 |
| 2 | 在留期間「5年」 | 高度専門職1号として一律で最長の「5年」の在留期間が付与。 |
| 3 | 配偶者の就労緩和 | 配偶者は学歴・職歴要件を満たさなくても、特定の職種での就労が可能に。 |
| 4 | 親の帯同許可緩和 | 一定の要件(世帯年収800万円以上など)で、親(父母)の帯同が可能に。 |
| 5 | 家事使用人の帯同 | 一定の要件(世帯年収1,000万円以上など)で、家事使用人の帯同が可能に。 |
| 6 | 審査の優先処理 | 入国・在留審査の手続きが他の申請に比べて優先的に処理される。 |
| 7 | 永住申請の要件緩和 | 永住許可申請の在留期間が最短1年または3年に短縮。 |
永住許可申請の要件緩和(優遇措置7番)
| ポイント数 | 永住許可申請に必要な在留期間 |
|---|---|
| 70点以上 | 継続して3年間の在留 |
| 80点以上 | 継続して1年間の在留 |
永住権獲得までの最短ルート:高度専門職2号への移行
高度専門職ビザの最大の目標の一つは、より安定性の高い在留資格である「高度専門職2号」への移行です。
2号への移行要件
高度専門職2号への移行を申請するためには、申請時点において、高度専門職1号の在留資格をもって3年間継続して活動を行っていたことが必要です。
また、申請時点においても1号のポイント計算の基準(70点以上)に引き続き適合していることや、素行が善良であること、その者の在留が日本の利益に合致することが必要です。
2号のメリット
高度専門職2号へ移行すると、在留期間が「無期限」となります。在留活動に制限がなく、在留期間にも制限がない在留資格「永住者」とほぼ同等の安定した在留資格となります。高度専門職2号は永住者とほぼ同等の地位ですが、永住許可申請の在留歴要件も緩和されているため、引き続き永住許可申請を行うことも可能です。
申請時の注意点
高度専門職ビザの申請では、厳格な審査基準が適用されるため、確実に許可を得るためには、専門的な知識と戦略が必要です。
ポイント計算の正確性(証拠書類の準備)
ポイント計算は、学歴、職歴、年収、研究実績など、各項目で得点したポイントの根拠となる客観的な証明書によって全て立証されなければなりません。
例えば、年収要件を満たしていることを証明するための雇用契約書や、特許証明書などの専門性の高い証拠書類の正確な準備が不可欠です。
雇用契約の安定性
雇用契約は、日本人と同等額以上の報酬額であること、労働基準法その他の労働に関する法令に適合していることが求められます。
報酬の支払い方法についても、預貯金口座への振込等、支払額を確認できる方法が原則となります。
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