特定技能「建設」採用ガイド:要件、2号移行と永住へのキャリア

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入管法務専門の行政書士として、人手不足の解消を目指す建設業者(特定技能所属機関)の経営者様、人事担当者様へ、「特定技能」の在留資格、特に「建設分野」における外国人材採用の法的要件と長期的な人材戦略について、詳細かつ専門的に解説いたします。

特定技能「建設」分野の基本概要

特定技能制度は、国内の生産性向上や人材確保の取り組みを行ってもなお人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を有する即戦力となる外国人を受け入れる仕組みを構築することを目的としています。

建設分野は、この制度の対象となる「特定産業分野」の一つであり、特定技能1号および2号の両方で受入れが可能です。

目的とメリット

建設分野の特定技能外国人は、最長5年(特定の理由がある場合は6年)の在留期間(1号)満了後、要件を満たせば特定技能2号へ移行が可能です。

特定技能2号を取得すると、在留資格上の制約が大幅に緩和されます。

在留期間の上限がなくなる(無期限化):2号の在留期間は3年、1年、または6か月ごとの更新となりますが、更新回数に上限がないため、実質的に日本への永続的な在留が可能となります。

家族帯同が可能:特定技能2号外国人は、配偶者と子について、要件を満たせば家族の帯同が認められます。これにより、外国人材が日本で安定した生活基盤を築き、長期的な就労意欲を維持することが可能となります。

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対象職種

建設分野の特定技能外国人が従事する業務区分は、土木、建築、ライフライン・設備の3つの大区分(業務区分)に分類されています。

分野業務区分(大別)業務内容(概要)根拠となる技能実習の職種(例)
建設土木土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等。型枠施工、鉄筋施工、とび、塗装、溶接など
建設建築建築物の新築、増築、改築、修繕又は模様替に係る作業等。建築大工、左官、かわらぶき、内装仕上げ施工など
建設ライフライン・設備電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更、修理に係る作業等。配管、建築板金、冷凍空気調和機器施工など

企業(受入機関)が満たすべき主要な要件

特定技能所属機関は、労働、社会保険、租税に関する法令を遵守していることなど、多数の基準を満たすことが求められます。特に、以下の事項を遵守しなければなりません。

労働条件の適正化:報酬が同等の業務に従事する日本人と同等以上であること、一時帰国を希望した場合は必要な有給休暇を取得させることなどを特定技能雇用契約で定める必要があります。

非自発的離職の防止:特定技能外国人と同種の業務に従事していた労働者を、契約締結の日前1年以内または締結日以後に、非自発的に離職させていないこと。

報酬の支払い:報酬は原則、外国人の指定する銀行その他の金融機関の預貯金口座への振込みによって支払われることとされており、その他の方法を採る場合は、現実に支払われた額を確認できる客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることとしていることが必要です,。

建設業独自の要件

建設分野の受入機関には、国土交通省の告示により、以下の建設分野固有の厳格な要件が課されます。

建設業 特定技能 受入時の独自要件概要根拠・目的
1. 受入計画の認定事前に国土交通大臣の認定を受けた「建設特定技能受入計画」の提出が必須。建設業法に基づく適正な事業運営の確認。
2. 実施法人への加入特定技能外国人受入事業実施法人(一般社団法人建設技能人材機構(JAC)など)に所属し、その行動規範を遵守すること。業界全体の健全化と、適正な受入体制の確保。
3. CCUS 登録受け入れた外国人を建設キャリアアップシステム(CCUS)に技能者として登録する義務。技能・就労履歴の管理、適正な処遇の確保。
4. 入国後講習国土交通大臣が指定する建設業法に基づく講習を受講させる義務。建設業特有の法令や安全衛生に関する教育。
5. 派遣の禁止労働者派遣の形態で雇用してはならない。直接雇用による適正な管理・育成の徹底。

1. 建設特定技能受入計画の認定

  • 特定技能1号外国人を受け入れる場合、受入機関は「建設特定技能受入計画」(様式第1)を作成し、国土交通大臣の認定事前に受けることが必須です。
  • この計画には、建設業法第3条第1項の許可(いわゆる建設業許可。許可の更新を含む)を受けていること、建設キャリアアップシステム(CCUS)に事業者として登録していることなどが必須要件として含まれます。

2. 受入事業実施法人等への加入

3.・4. CCUS登録と入国後講習の実施

  • 受け入れた1号特定技能外国人CCUSに技能者として登録することが義務付けられています。
  •  1号特定技能外国人に対し、国土交通大臣が指定する講習または研修受け入れた後において受講させることが義務付けられています。

5. 労働者派遣の禁止

  •  建設分野では、労働者派遣(労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣)の対象となることを内容とする特定技能雇用契約を締結してはならないとされています。特定技能外国人を派遣することも、派遣された者を受け入れることもできません。

就労希望者(外国人)が満たすべき技能要件と試験

特定技能1号外国人は、以下の技能水準日本語能力水準両方を満たすことが必要です。

評価項目基準試験・評価方法免除の可否
技能水準従事する業務に必要な相当程度の知識又は経験を有する技能建設分野特定技能1号評価試験の合格。建設分野に関する第2号技能実習を良好に修了している場合、試験免除。
日本語能力水準ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力(N4相当以上)国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(N4以上)のいずれかの合格。職種・作業の種類にかかわらず、第2号技能実習を良好に修了している場合、試験免除。

上記の表のように、特定技能1号では、日常会話レベルの証明+建設分野特有の技能レベルの証明が求められます。

 特定技能2号への移行と永住権へのキャリアパス

特定技能制度は、外国人材が特定技能2号(熟練した技能)への移行を最終的な目標とすることで、日本での長期的なキャリア形成を可能とし、永住権取得の足がかりを提供します。

2号移行の条件

特定技能2号の在留資格が許可されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

熟練した技能従事しようとする業務に必要な熟練した技能を有していることが、試験その他の評価方法により証明されている必要があります。

これは、自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる水準、または監督者として業務を統括しつつ熟練した技能で業務を遂行できる水準を指します。

2号評価試験: 建設分野においては、「建設分野特定技能2号評価試験」の合格が必要です。

技能実習からの移行:「特定技能1号」を経なくても、試験の合格等により2号の技能水準を有すると認められる者であれば、直接「特定技能2号」の在留資格を取得することができます。

技能移転:技能実習の在留資格をもって本邦に在留していたことがある者は、当該技能実習において修得等した技能等を本国への移転に努めるものと認められることが求められます。

特定技能2号評価試験の受験資格と直接移行

技能実習2号(または3号)を良好に修了している場合は、特定技能1号に必要な試験を受けることなく特定技能1号に移行できます。

さらに、特定技能1号を経ることなく特定技能2号評価試験を受けることが可能です。この試験は、在留資格を有する外国人であれば原則として受験できます。

例として、在留資格「留学」から2号評価試験に合格し、その後日本の建設会社と特定技能雇用契約を締結して在留資格を特定技能2号に変更する、というルートも存在します。また、本国から在留資格「短期滞在」で試験に合格し、在留資格認定証明書交付申請を行うことで、特定技能2号として働くことも可能です。(※その他特定技能2号の要件を満たしている必要があります。)

2号のメリット(1号との比較)

特定技能2号の在留資格が許可されると、以下のメリットが得られます。

メリット項目特定技能1号特定技能2号(熟練技能)
在留期間の上限1年を超えない範囲(通算5年上限)無期限(更新回数に上限なし)
家族帯同の可否不可可能(配偶者、子)
到達しうる技能水準相当程度の知識・経験(即戦力)熟練した技能(監督者レベル)
特定技能2号への移行要件とは? 家族の呼び寄せと1号との違い

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永住への道

特定技能2号を取得し、日本での在留期間が継続されることは、永住権への道筋となります。

永住許可の要件: 永住許可を得るためには、原則として「引き続き10年以上日本に在留している」こと、素行が善良であること、および独立の生計を営むに足りる資産または技能があることが必要です。

長期の在留実績:特定技能2号の在留期間に上限がないため、日本での長期的な在留実績を積み重ねることができ、永住許可の要件である「10年以上の在留」を満たすことが可能になります。

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 申請手続きのステップと不許可リスク

特定技能所属機関は、外国人材の安定的な雇用と在留を確保するため、申請段階から法令遵守を徹底しなければなりません。

申請手続きの注意点

1. 特定技能雇用契約と支援計画の作成

  •  在留資格認定証明書交付申請(海外からの新規招へい)または在留資格変更許可申請(国内在留者)を行う際、特定技能所属機関は、特定技能雇用契約1号特定技能外国人支援計画併せて提出しなければなりません。
  • 特定技能所属機関が、支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合には、外国人を支援する体制があるものとみなされます

2. 随時届出の厳守

  •  特定技能雇用契約の変更(軽微な変更を除く)、終了、新たな契約の締結、支援計画の変更、受入れ困難時など、法務省令で定められた事由が発生した場合は、事由発生日から14日以内に地方出入国在留管理局へ届出を提出することが義務付けられています。
    届出の不履行や虚偽の届出には罰則(30万円以下の罰金または10万円以下の過料)が適用される可能性があります。

不許可リスク

以下のような事由は、特定技能の申請が不許可または在留資格の取消しの原因となる可能性があります。

リスク要因根拠となる行為
労働条件の不適正報酬が同等の日本人と同等額以上ではない、一時帰国の希望時に有給休暇を与えないなど。
法令違反・納税義務不履行労働基準法、社会保険、租税に関する法令(国民健康保険や国民年金の保険料を含む)を遵守していない場合。
不正行為外国人に対する暴行・脅迫・監禁、旅券や在留カードの取上げ、保証金の徴収違約金を定める契約の締結など。
非自発的離職者の発生過去1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事していた労働者を非自発的に離職させた場合。
派遣形態による雇用建設分野において、労働者派遣の対象とすることを内容とする特定技能雇用契約を締結した場合。

長期的な人材育成を見据えた採用戦略

特定技能「建設分野」は、貴社が即戦力となる優秀な外国人材を迎え入れ、彼らが特定技能2号、そして永住権へと繋がる長期的なキャリアを日本で築くための強固な制度的基盤を提供します。

この制度を最大限に活用するためには、国土交通大臣の認定が必須となる建設特定技能受入計画の策定と厳格な実施、そしてCCUSへの登録・活用が鍵となります。外国人材を長期的な戦力として育成し、貴社の事業継続と成長に繋げるため、法令を遵守した適正な採用と雇用管理を推進されることを強くお勧めいたします。

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