【プロ解説】特定技能「飲食料品製造業」の要件と業務範囲、法的リスク

深刻な労働力不足が続く食品製造現場において、特定技能制度は即戦力確保の切り札です。しかし、この分野には特有の「製造工程のルール」や「衛生管理基準」が存在し、正しく理解していないと不許可や受入れ停止のリスクがあります。
そこで、入管法務に携わる行政書士が、実務的な観点から詳しく解説します。
飲食料品製造業分野の概要
特定技能「飲食料品製造業」は、飲食料品(酒類を除く)の製造・加工や安全衛生の確保に従事する活動を対象としています。
慢性的な人材不足に悩む食品メーカーや、多種多様な調理工程を持つ惣菜製造工場にとって、一定の専門性を持った即戦力人材を直接雇用できるこの制度は、事業の存続と発展に不可欠なものとなっています。
受入れ企業(所属機関)が満たすべき固有要件
特定技能外国人を受け入れる企業は、一般的な就労ビザの基準に加え、本分野固有の要件を満たす必要があります。
| 項目 | 内容の解説 | 留意点 |
|---|---|---|
| 食品産業特定技能協議会への加入 | 在留資格認定証明書(COE)申請までに加入手続きを完了し、「構成員資格証明書」等を取得しておく必要があります。 | 農林水産省が設置する協議会です。加入を怠ると更新ができません。 |
| HACCPに沿った衛生管理 | 改正食品衛生法に基づき、HACCPに沿った適切な管理体制の構築が必要です。 | 現場の衛生管理記録などが適正運用の裏付けとなります。 |
| 酒類製造の除外 | 日本標準産業分類の「食料品製造業」等が対象であり、酒類製造は対象外です。 | ビール、清酒、ワイン等の製造にはこのビザは使えません。 |
| 直接雇用の原則 | 農業などの一部分野と異なり、派遣形態は認められません。 | 企業による直接雇用(フルタイム)が必須条件です。 |
なぜ特定技能外国人にHACCP教育が必要か?
特定技能外国人が現場で活躍するためには、現在すべての食品事業者に義務化されているHACCP(ハサップ)の理解が欠かせません。衛生管理の『なぜ?』を理解させることで、重大な食中毒事故や異物混入のリスクを未然に防ぐことができます。
HACCPは「記録」が命です。もし外国人従業員が「少し温度が足りないけど大丈夫だろう」と記録を書き換えたり、記録を怠ったりすれば、工場全体の管理体制が崩壊し、法的・社会的な責任を問われるリスクがあります。
「決められた数値を測り、正しく記録すること」の意味を教えることが、不法就労防止と同じくらい重要なコンプライアンス対策となります。
外国人材が満たすべき要件
外国人が「特定技能1号(飲食料品製造業)」を取得するには、以下のいずれかのルートを通る必要があります。
- 技能測定試験ルート:飲食料品製造業の「技能試験」と、日本語試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic)の両方に合格すること。
- 技能実習からの移行ルート:食品製造関係の「技能実習2号」を良好に修了した者は、試験(技能・日本語)が免除され、無試験での移行が可能です。
許容される業務範囲と実務上の注意点
現場担当者が最も注意すべきは、従事させる業務の内容です。不適切な配置は法令違反となります。
- 主業務:飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生の確保、品質管理。
- 付随的業務:主業務に従事する日本人が通常携わる関連業務(原料の搬入、包装、清掃、運搬など)。
行政書士の警鐘
注意すべきは、これら付随的業務に「専ら(もっぱら)」従事させることは禁止されている点です。例えば、「一日中清掃や搬送のみを行わせる」といった運用は、単純労働とみなされ、不法就労助長罪や受入れ機関の基準不適合に問われるリスクがあります。
違反が発覚した場合、最長5年間の受入れ停止という極めて厳しい制裁が科される可能性があるため、工程管理には細心の注意を払ってください。
【参照必須】就労ビザ共通の審査基準と企業の義務
特定技能の申請においても、全ての就労ビザに共通する根幹的な審査基準があります。具体的には、「安定的収入(生計維持能力)」、「素行の善良性(法令遵守)」、「日本人と同等以上の報酬額」、そして「企業の欠格事由への非該当」などが厳格にチェックされます。
これらの共通要件についての詳細は、別記事『【就労ビザ共通】許可・不許可を分ける二大審査基準と企業の義務』を必ず併せてご参照ください。共通要件を満たしていない場合、分野別の要件を満たしていても不許可となります。
採用メリットと将来の展望(特定技能2号)
飲食料品製造業分野においても「特定技能2号」への移行が可能となったことは、企業にとって大きなメリットです。2号に移行すれば、在留期間の更新回数制限がなくなり、実質的な長期雇用が可能となります。
さらに、配偶者や子といった家族の帯同も認められるため、熟練した現場リーダーや幹部候補として、腰を据えて活躍してもらうことが期待できます。
まとめ
飲食料品製造業における特定技能制度の活用は、単なる人手不足の解消にとどまらず、適正な実務管理を通じて企業の組織体制を強化し、持続的な成長へと繋げる好機です。
一方で、複雑な法制度や各種届出義務を遵守し続けることは、現場にとって少なくない負担となります。
制度の解釈や、スムーズな受入れ準備について不安がある場合は、ぜひ入管法務の専門家へご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な採用戦略をサポートいたします。
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