就労ビザの転職実務マニュアル|届出と変更申請の違いと注意点を詳しく解説

日本で就労する外国人が転職を行う際、最も陥りやすい罠は「現在の在留期限内であれば、次の更新時まで何の手続きも不要である」という誤解です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」と「特定技能1号」では、転職時に求められる手続きが根本的に異なり、これを怠ると20万円以下の罰金や、最悪の場合は在留資格の取消しといった甚大なペナルティを課されるリスクがあります。
本記事では、これら二つの就労ビザにおける転職実務の全体像を法的根拠に基づいて解説します。
ビザ別・転職時の中核的手続き
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務 (技人国) | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 在留資格変更の要否 | 原則不要(同一範囲内なら) | 必須(指定書の書き換え) |
| 入管への届出義務 | 所属機関に関する届出(14日以内) | 不要(変更申請に含まれる) |
| 支援機関の関与 | なし | 必須(新たな支援計画が必要) |
| 就労開始可能時期 | 転職後すぐ(適法性が前提) | 許可取得後(申請中は不可) |
| 推奨される任意手続き | 就労資格証明書交付申請 | 特になし |
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の転職
技人国の転職は、いわば「車種限定のない運転免許」を所持している状態に似ています。同じ「普通車(技人国の業務範囲)」を運転する限り、乗る車(会社)を変えても免許そのものを書き換える必要はありません。
所属機関に関する届出(14日以内ルール)の法的義務
技人国などの就労ビザを保持する外国人は、転職した際、事由が生じた日から14日以内に「所属機関等に関する届出」を出入国在留管理庁長官に行わなければなりません。
- 届出が必要な事由
前職の退職(離脱)および新職との契約締結(移籍)。 - 提出方法
窓口持参、郵送、または「出入国在留管理庁電子届出システム」によるオンライン提出が可能です。
就労資格証明書交付申請の重要性と申請手順
技人国では会社が変わる際の「許可」は不要ですが、新しい会社での仕事内容が本当に現在のビザの基準に適合しているかは、次回の更新時まで審査されません。この「空白の審査期間」のリスクを回避するために活用されるのが「就労資格証明書交付申請」です。
就労資格証明書交付申請のメリットは?
入管が事前に新しい仕事の適法性を証明してくれるため、次回の在留期間更新が事実上保証され、企業・外国人双方が安心して雇用を継続できます。
申請に必要な書類は、新会社の登記事項証明書、決算書、業務内容を明らかにする資料など、実質的には変更許可申請と同等の立証資料が求められます
届出を怠った際の影響
14日以内の届出を怠った場合、20万円以下の罰金に処せられる可能性があるほか、将来の「永住申請」において「公的義務を履行していない」と判定され、不許可の決定的な原因となるリスクがあります。
「特定技能1号」の転職と支援機関の役割
特定技能1号の転職は、技人国とは異なり、「A社という会社で働くこと」を条件に付与された限定免許のような性質を持ちます。
なぜ「在留資格変更許可申請」が必須なのか
特定技能外国人のパスポートには、受入れ機関の名称や所在地が記載された「指定書」が添付されています。転職して受入れ機関が変わる場合、この指定書の内容を法的に書き換える必要があるため、在留資格の名称は変わらなくても、手続き上は「在留資格変更許可申請」を行わなければなりません。
注意点
許可が下りる前に新しい会社で就労を開始すると、「不法就労」となり、本人だけでなく受入れ企業も処罰の対象となります。
登録支援機関の関与と実務的な流れ
特定技能の転職では、新しく受け入れる企業(特定技能所属機関)が、その外国人のために新たな「支援計画」を策定しなければなりません。
- 支援委託契約の切り替え
自社で支援を行わない場合、新たに登録支援機関と支援委託契約を締結します。 - 事前ガイダンスの再実施
雇用契約締結にあたり、労働条件や入国手続きについて本人が理解できる言語で説明を行う必要があります。 - 申請の受理要件
新たな支援計画書や支援体制を証明する書類が揃っていなければ、入管で変更申請が受理されません。
職業紹介免許の確認は必須
特定技能外国人の転職をあっせん(紹介)する者がいる場合、その者が職業安定法に基づく職業紹介の許可を得ているか、あるいは無料職業紹介の届出を行っているかを確認する義務があります。無免許のブローカーから紹介を受けた場合、受入れ企業側も欠格事由に該当する恐れがあります。
届出・申請の期限と違反時のペナルティ
転職に伴う手続きの不備は、単なる事務ミスでは済まされない重いペナルティを引き起こします。
14日以内の届出義務違反
転職(契約の終了・締結)から14日以内に届出を行わなかった場合、罰金刑に加え、在留状況が不良であるとみなされ、在留資格の取消対象(正当な理由なく活動を3か月以上行わない場合等)となるリスクがあります。
特定技能における「資格外活動(不法就労)」の発生
特定技能外国人が変更許可を受ける前に新天地で働き始めた場合、それは付与された「指定書」の範囲外で働いていることになります。これは法律上、「資格外活動(不法就労)」に該当し、本人の強制退去事由になるだけでなく、雇用主も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
転職Q&A
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退職から次の就職まで何ヶ月まで許されますか?
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法的には、正当な理由なく本来の活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合、在留資格の取消対象となります。ただし、病気療養や真摯な転職活動を継続しているなどの「正当な理由」がある場合は、この限りではありません。
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前職から源泉徴収票や退職証明書がもらえない場合はどうすれば良いですか?
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転職時の「就労資格証明書」や特定技能の「変更許可申請」では、前職の退職理由や所得を証明する書類が必要です。どうしても入手できない場合は、その経緯を記載した「理由書」を提出し、入管に事情を疎明することになります。
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副業先が変わった場合は手続きが必要ですか?
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資格外活動許可を受けて副業をしている場合、その許可内容(活動場所など)に変更があれば、改めて許可を受けるか、変更の届出を行う必要があります。
まとめ
就労ビザを保持する外国人の転職は、単なる「所属先の変更」ではなく、国に対する「活動内容の再報告と再審査」のプロセスです。
技人国の届出14日ルールや、特定技能の変更許可必須ルールなど、期限や手順を一つ誤るだけで、企業にとっては貴重な戦力を失い、外国人本人にとっては日本でのキャリアを断絶させられる重大な結果を招きかねません。
特に2024年の制度改正や運用の厳格化により、書類の整合性チェックは以前にも増して厳しくなっています。
これらの複雑な入管法規を確実に遵守し、企業と外国人の双方が本来の業務に専念するための解決策として、私たち行政書士のような専門家に手続きを依頼することも、リスクを最小化し円滑な受入れを実現するための有力な選択肢の一つです。
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