特定技能の支援費削減|委託から「自社支援」への切替え要件とコスト比較

「毎月、一人あたり数万円の委託費……これ、人数が増えると結構バカにならないんだよね」
最近、特定技能外国人を雇用されている経営者様から、こんなため息交じりのご相談をいただくことが増えました。 制度が始まったばかりの頃は、「手続きが複雑そうだから、専門機関に全部任せるのが安心」という判断が正解だったと思います。
しかし、運用に慣れてきたいま、外部に丸投げし続けることは、コスト面でもリスク管理の面でも、必ずしもベストな選択ではなくなりつつあります。 実は、一定の要件さえ満たせば、この支援業務は「自社(受入れ機関)」で行うことができるのです。
なぜ今、「自社支援」への切り替えが注目されているのか
特定技能制度において、1号特定技能外国人の受入れ機関(企業)は、法令で定められた「支援計画」を実施することが義務付けられています。この支援は、専門の「登録支援機関」に委託することが可能ですが、「委託しなければならない」わけではありません。要件さえ満たせば、企業自身で行うこと(自社支援)が十分に可能なのです。
外部委託の落とし穴と「ブラックボックス化」のリスク
登録支援機関への委託は、手間の削減という点では大きなメリットがあります。しかし、一方で以下のような課題を感じている企業様も少なくありません。
- 「生活面の相談やトラブル対応を外部業者が行うため、会社が本人の悩みや状態を把握できない。」→外国人社員との距離感
- 委託費を払っているのに、実際には形式的な面談しか行われていない(いわゆる「名ばかり支援」)リスク。→支援の質のバラつき
- 採用人数が増えれば増えるほど、毎月の管理費が経営を圧迫する。→コストの固定化
「自社支援」への切り替えは、これらの課題を解消し、企業統治(ガバナンス)を自社に取り戻すプロセスでもあります。行政書士として多くの案件に関わる中で、自社支援に切り替えた企業様からは「社員の顔が見えるようになった」「社内の雰囲気が良くなった」という声を多くいただいております。
「自社支援」に切り替える3つの確実なメリット
ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか、3つの視点から解説します。
メリット① 大幅なコスト削減と資源の再配分
最大のメリットは、やはりコストです。 一般的な登録支援機関の委託費相場は、外国人1名あたり月額2万円~3万円程度です。これを具体的にシミュレーションしてみましょう。
委託の場合
- 特定技能外国人 10名 を雇用
- 委託費単価:3万円/月
- 月間コスト:30万円
- 年間コスト:360万円
10名の雇用で、年間360万円ものキャッシュアウトが発生します。これを「自社支援」に切り替えれば、この外部流出コストをほぼゼロ(実費のみ)に抑えることができます。
浮いた360万円をどう使うか。例えば、外国人社員の昇給や賞与に還元すれば、定着率は劇的に向上します。あるいは、日本人社員も含めた社内教育費や、設備投資に回すことも可能です。「管理コスト」を「投資」に変えることができるのが、自社支援の最大の魅力です。
メリット② 社内ノウハウの蓄積と信頼関係の構築
支援業務には、空港への送迎、住居の確保、公的手続きの同行、日本語学習の機会提供などが含まれます。これらを自社の総務や人事担当者が行うことで、自然と外国人社員とのコミュニケーション量が増えます。
例えば...
「〇〇さんが役所まで付いてきてくれた」「〇〇課長がアパートの手配を手伝ってくれた」という経験は、外国人社員にとって会社への強い帰属意識(エンゲージメント)を生みます。
外部の人間ではなく、自社の社員がサポートすることで、「大切にされている」という実感が湧き、結果として離職防止につながるのです。また、社内に国際業務や多文化共生のノウハウが蓄積されることは、将来的に外国人材の登用を拡大する上での貴重な財産となります。
メリット③ 事務負担の軽減と透明性の確保
実は2025年4月の法改正により、入管への定期届出の頻度が従来の「四半期ごと(年4回)」から「年1回」へと大幅に緩和されました。 これにより、自社支援を行う上での事務的なハードルは劇的に下がっており、今はまさに自社支援への切り替えの好機と言えます。
しかし、届出回数が減ったからこそ、日々の支援実施状況を自社で確実に記録・管理する「透明性」がより重要になります。
外部委託の場合、実際の支援状況が見えにくくなり(ブラックボックス化)、知らない間に法令違反の状態になっているリスクもあります。自社支援であれば、「いつ、誰が、どのような相談を受けたか」が確実に社内記録として残り、コンプライアンス体制を強固に守ることができます。


実は難しくない!法令に基づく「自社支援」への移行ステップ
「メリットはわかるが、条件が厳しいんじゃないの?」 「専門知識がないと無理じゃない?」 そう思われる方も多いでしょう。しかし、法務省が公表している『特定技能運用要領』を紐解けば、要件は決して非現実的なものではありません。
移行のための「適合性要件」をチェック
自社支援を行うためには、受入れ機関(御社)が以下のいずれかの基準を満たしている必要があります。
1. 過去2年間に、中長期在留者(就労ビザを持つ外国人等)の受入れ実績があり、適正に管理していること。
すでに「技術・人文知識・国際業務」などのビザで外国人を雇用している、あるいは技能実習生を適正に受け入れてきた実績があれば、この要件をクリアできる可能性が高いです。
2. (実績がない場合)役員または職員の中から、過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験のある者を「支援責任者」等として配置できること。
会社としての実績がなくても、例えば「以前の職場で技能実習生の指導員をしていた」といった経験を持つ社員がいれば、その方をキーマンとして要件を満たせる場合があります。
これらに加え、情報提供や相談対応が可能な体制(日本語でのコミュニケーションが難しい場合は通訳の確保など)が求められますが、最近では翻訳アプリの活用や、雇用する外国人の日本語能力(N4以上が要件ですが、実際はN3以上の方も多いです)によっては、社内リソースだけで十分対応可能なケースも増えています。
「支援責任者」の配置と中立性の確保
自社支援を行う際、社内に「支援責任者」と「支援担当者」を選任する必要があります。ここで重要なのが「中立性」です。
『特定技能運用要領』では、支援責任者等が「指揮命令権を有する者(直属の上司など)であってはならない」とされています。例えば、現場の工場長が支援責任者を兼任するのは、パワハラ防止や相談の中立性の観点から認められにくい傾向にあります。
一方で、現場とは異なる「総務部」「人事部」「管理部」の担当者が支援責任者になることは、一般的に推奨されています。これは多くの企業において、既存の組織図の中で無理なく配置できる要件と言えるでしょう。
支援内容は「通常業務の延長」と考えよう
「義務的支援」とされる項目には、以下のようなものがあります。
- 事前ガイダンス(雇用条件の説明)
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 定期的な面談・行政への通報
これらをリストで見ると大変そうに見えますが、実は「日本人社員を採用した時の手続き」プラスアルファの内容が大半です。 住居の手配や銀行口座の開設、オリエンテーションなどは、新入社員受け入れ業務の一環としてフローに組み込んでしまえば、決して不可能な負担ではありません。
「全て自社」が不安なら…専門家との「賢い役割分担」
ここまで自社支援のメリットをお伝えしてきましたが、法改正で定期届出が「年1回」になり事務負担が軽くなったとはいえ、やはり「入管への申請書類」や「年に一度の重要な届出」など、専門的な法務手続きには不安が残るというのも本音でしょう。
そこで、コストと安心を両立させる現実的な解決策として注目されているのが、「支援(実行)は自社、書類(法務)は専門家」というハイブリッドな運用です。
行政書士に任せるべき領域、自社でやるべき領域
登録支援機関への「全部委託」か「全部自社」かの二者択一ではなく、行政書士との「書類作成代行」や「顧問契約」を活用することで、以下のような合理的な切り分けが可能になります。
自社で行うこと
- 日々の声掛け、生活相談対応
- 空港送迎、住居手配、病院同行など
- 社内イベント等の交流促進
- → お金ではなく「人」が関わることで信頼関係を築く部分
専門家がサポートすること
- 特定技能運用要領に基づいた「支援計画書」の作成・変更
- 在留資格変更許可申請、期間更新許可申請
- 年1回の「定期届出書」の作成・チェック
- 法改正情報の提供、コンプライアンス監査
- → 専門知識が必要で、ミスが許されない手続き部分
このスタイルであれば、登録支援機関に支払う高額な管理費(1人あたり月数万円)を削減しつつ、行政書士への報酬(スポット依頼や安価な顧問料)のみで、法的安全性も担保できます。 結果として、「コストダウン」と「安心(コンプライアンス)」のいいとこ取りが実現するのです。
まとめ:まずは「自社支援が可能か」の診断から始めませんか?
特定技能制度は、単なる労働力不足の解消手段ではなく、御社が「外国人と共に成長する組織」へと進化するためのきっかけです。 法改正で運用しやすくなった今こそ、外部への依存を見直し、自社で彼らを支える体制を作る絶好のタイミングです。
「うちは自社支援に切り替えられるだろうか?」 「今の委託費が適正かどうか知りたい」 「支援責任者になれる人材がいるか確認したい」
そのような疑問をお持ちの経営者様、人事担当者様は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。 最新の審査基準や運用要領に基づき、御社の現状で自社支援への移行が可能か、厳格かつ丁寧に診断させていただきます。
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