特定技能「漁業」採用・申請ガイド|漁業・養殖業の要件と注意点

四方を海に囲まれた日本において、水産業は食料安全保障を支える極めて重要な基幹産業です。しかし、近年の漁業現場は、生産者の減少と急速な高齢化という荒波に直面しており、事業継続が危ぶまれる地域も少なくありません。
こうした深刻な人手不足への対策として、2019年より導入されたのが在留資格「特定技能」です。
本制度は、単なる「安価な労働力」の確保ではなく、一定の専門技能を持った「次世代の水産業の担い手」を迎え入れるための仕組みです。本記事では、入管法務専門の行政書士が、漁業分野特有の複雑なルールと、長期的な戦力化に向けた実務ポイントを徹底解説します。
特定技能「漁業」分野の全体像と2つの業務区分
特定技能「漁業」には、大きく分けて「漁業(獲る漁業)」と「養殖業(育てる漁業)」の2つの業務区分が存在します。それぞれの区分で求められる技能試験が異なりますが、日本語能力(N4相当以上)については共通の要件となっています。
業務区分と主な作業内容の比較
| 区分 | 主な作業内容(主業務) | 認められる付随的業務 |
|---|---|---|
| 漁業 | 漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等 | 漁獲物の加工、運搬、販売、漁船の清掃等 |
| 養殖業 | 養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、収穫(獲)・処理、安全衛生の確保等 | 養殖産物の加工、運搬、販売、養殖場の清掃等 |
実務の境界線:加工・箱詰め業務の許容範囲
現場の経営者が最も注意すべきは、加工業務の扱いです。特定技能外国人が、例えば「市場での箱詰め」や「工場内での加工」に従事することは可能ですが、それらはあくまで「日本人が通常従事する関連業務」として付随的に行われるものに限られます。「一日中、陸上の加工場でのみ作業させる」といった配置は認められません。
特定技能の趣旨は、あくまで船上での採捕や養殖管理といった「主業務」に従事することにあるため、業務比率の管理には十分な配慮が必要です。
漁業特有の「労働基準法」の適用除外と報酬の考え方
漁業分野の雇用において、他の産業分野と決定的に異なるのが労働法制の適用範囲です。
労働基準法第41条の適用
漁業に従事する者は、労働基準法第41条により、「労働時間、休憩、休日」に関する規定が適用除外となります。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
(省略)別表第一(第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)
e-Gov:労働基準法
(省略)
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
これは、天候や潮の満ち引き、魚群の動向によって稼働時間が左右される漁業の特殊性を考慮したものです。しかし、この規定は「際限なく働かせてよい」という意味ではありません。特定技能制度の運用においては、外国人の健康と福祉を守る観点から、適正な休息の確保が強く求められます。
報酬設定と生活支援の重要性
漁業は不漁期などによって稼働が不安定になりがちですが、特定技能外国人に対しては、「日本人と同等額以上の報酬」を安定的に支払うことが雇用契約の絶対条件です。
- 月給制の推奨👉稼働日数に左右されない月給制を基本とすることで、外国人の生活基盤を安定させ、失踪リスクを軽減することが期待できます。
- 手当の明確化👉 危険を伴う作業や早朝・深夜の稼働に対し、日本人と同様の基準で手当を支給しているかを厳格にチェックされます。
受入れ企業(所属機関)の要件と「漁業特定技能協議会」
漁業分野で外国人を受け入れる企業や個人事業主は、以下の固有要件を満たす必要があります。
漁業特定技能協議会への加入
受入れ機関は、水産庁が設置する「漁業特定技能協議会」の構成員にならなければなりません。
- 加入時期👉 在留資格認定証明書(COE)申請までに加入手続きを完了し、「構成員資格証明書」等を取得しておく必要があります。
- 役割👉 協議会では、外国人材の引き抜き防止に係る申し合わせや、安全性の確保、適切な配乗人数(漁船の乗組員数)の報告受付などが行われます。
漁協等との連携と指導体制
漁業分野では、受入れ機関が地域の漁業協同組合(漁協)等に所属し、適切な指導・助言を受ける体制を構築していることが望ましいとされています。
特に船上作業は危険を伴うため、安全衛生教育の徹底と、事故発生時の緊急連絡体制の整備が不可欠です。
直接雇用と派遣形態の選択
漁業分野では、一般的な「直接雇用」のほかに、「派遣形態」による受入れも認められています。
派遣形態のメリット👉 漁期が限られている地域や、複数の漁業者で人材をシェアしたい場合に有効です。この場合、派遣元は漁協や適当と認められる機関である必要があります。
外国人材が満たすべき要件と「技能実習」からの移行
外国人が漁業分野の特定技能1号を取得するには、2つのルートがあります。
- 技能試験ルート👉 「1号漁業技能測定試験(漁業または養殖業)」と日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上)に合格すること。
- 技能実習からの移行ルート👉 漁業分野の技能実習2号を「良好に修了」した者は、試験が免除され、無試験での移行が可能です。
特定技能2号への展望と永住権への道
漁業分野においても、熟練した技能を要する「特定技能2号」への移行が可能です。
- 2号のメリット👉 在留期間の更新回数に制限がなくなり、家族(配偶者・子)の帯同が認められます。
- • キャリアパス👉 1号として5年間経験を積み、現場のリーダー(操業を指揮監督する者の補佐や作業工程の管理)として成長した人材を、2号として長期雇用することで、将来の船団長や養殖責任者へと育成することが可能です。
就労ビザ共通の審査基準と企業の義務
漁業分野独自の要件を満たすだけでは、許可は下りません。全ての就労ビザに共通する根幹的な基準のクリアが不可欠です。
具体的には、「安定的収入(生計維持能力)」「本人の素行の善良性(犯罪歴の有無)」「日本人と同等額以上の報酬額」、そして「企業の欠格事由(過去5年以内の労働法違反等)への非該当」が厳格にチェックされます。
これら共通要件についての詳細は、別記事『【就労ビザ共通】許可・不許可を分ける二大審査基準と企業の義務』を必ず併せてご確認ください。ここが疎かになると、分野別の要件をどれほど完璧に揃えても不許可となるリスクがあります。
海と共に生きるパートナーとして
特定技能制度の活用は、人手不足に悩む漁業現場にとって、単なる補充要員を確保する以上の価値があります。適切な実務管理とキャリア支援を通じて、彼らは貴社の事業を支えるかけがえのないパートナーへと成長します。
一方で、協議会の届出や複雑な労働時間管理など、法的な守りを固める作業は、多忙な漁業者の皆様にとって少なくない負担となるでしょう。
円滑な採用とコンプライアンスの遵守を両立させるために、ぜひ入管法務の専門家をご活用ください。
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