特定技能「自動車整備」採用ガイド|最新の受入要件と特定整備対応

日本の自動車整備業界は、若者の車離れや深刻な少子高齢化により、極めて厳しい人材不足に直面しています。自動車整備要員の有効求人倍率は4.72倍(令和4年度)に達し、現場の高齢化も止まりません。
この危機的な状況への「経営上の解決策」として期待されているのが、在留資格「特定技能」です。2024年以降、制度の統合や「特定整備」の定義明確化、協議会ルールの変更など、実務上の大きな変化がありました。
本記事では、入管法務専門の行政書士が、単なる申請代行にとどまらない「長期的な戦力化」を見据えた実務ガイドを徹底解説します。
従事可能な業務内容:専門技能と付随業務の境界線
特定技能「自動車整備」で認められる業務は、道路運送車両法に基づく以下の3つに明確に定められています。
主業務:安全性に直結する重要整備
- 日常点検整備
灯火装置の点灯確認、液類の量、ハンドルの操作具合等の点検。 - 定期点検整備
法定12ヶ月点検、24ヶ月点検など。 - 特定整備(旧 分解整備を含む)
ブレーキ装置(マスタシリンダ、ディスク等)、原動機(エンジン)、動力伝達装置(トランスミッション等)、走行装置(アクスル等)、かじ取り装置(ギヤボックス等)など、重要部品を取り外して行う整備や改造。
付随業務と禁止業務の区別
主業務の合間に行う「付随業務」には注意が必要です。
| 区分 | 具体的な業務内容 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 認められる付随業務 | 洗車、車内清掃、タイヤ・部品の整理、下廻り塗装、ナビ・ETC等の電装品取付、部品番号検索、構内清掃 | 主業務とのバランスが重要。専ら付随業務のみを行わせることは認められません。 |
| 禁止される業務 | フロントでの専属受付、営業活動のみ、部品配送のみ、事務作業のみ | 特定技能の趣旨である「相当程度の技能」を要しない業務は不許可リスクとなります。 |
実務上のポイント
審査では「現場での実態」が厳しく問われます。例えば、一日の大半を洗車や受付に費やしている実態が在留期間更新時に発覚した場合、虚偽申請とみなされ受入れ停止措置を受けるリスクがあるため、作業日報等での管理が必要です。
受け入れ企業(所属機関)の独自要件
自動車整備分野は、人命に関わるため他分野よりも厳しい法的要件があります。
「認証工場」または「指定工場」の証明
特定技能外国人を受け入れる事業場は、道路運送車両法第78条第1項に基づく「地方運輸局長の認証」を受けている必要があります。
- 認証の範囲
装置の範囲が限定されている限定認証や、二輪自動車のみの認証工場であっても、特定技能の受入れは可能です。 - 証明資料
申請時には地方運輸局長が発行した認証状(指定証)の写しの提出が必須です。
「自動車整備分野特定技能協議会」への加入
受入れ企業は、国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員にならなければなりません。
実務上のポイント
以前は「受入れ後4ヶ月以内」でしたが、現在は在留資格の申請時に「構成員であることの証明書」の添付が必須となっています。
つまり、「申請前に加入手続きを完了」させておく必要があります。
- 事務局窓口
各地方運輸局(または沖縄総合事務局)の自動車技術安全部整備・保安課が届出先となります。
外国人材本人の要件
外国人が特定技能1号「自動車整備」を取得するには、以下の2つのルートがあります。
1. 試験ルート(新規採用者・留学生等)
- 技能水準
「自動車整備分野特定技能1号評価試験」または「3級自動車整備士技能検定試験」に合格すること。
1号評価試験は、3級整備士と同水準の筆記および実技試験(日本語)で構成されます。
- 日本語能力水準
日本語能力試験(JLPT)のN4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格。
技能実習からの移行ルート
「自動車整備職種、自動車整備作業」の技能実習2号を「良好に修了」した者は、技能・日本語試験の双方が免除され、無試験で移行可能です。
良好に修了とは
技能実習を2年10か月以上修了し、技能検定3級に合格しているか、実習実施者が作成した「評価調書」により技能修得が良好と認められることを指します。
申請手続きのステップとタイムライン
標準的な手続きのフローは以下の通りです。
- 1. 特定技能雇用契約の締結
- 日本人と同等以上の報酬、直接雇用が条件です。

- 2. 健康診断の受診
- 国内外の医療機関で特定技能用の診断(活動性結核の確認等)を受けます。

- 3. 事前ガイダンスの実施
- 労働条件や入国手続等について、本人が理解できる言語で説明します。

- 4. 協議会への入会申請
- 管轄の地方運輸局へ申請し、「構成員資格証明書」を取得します。

- 5. 地方出入国在留管理局への申請
- 認定証明書(COE)交付申請または在留資格変更申請。標準処理期間は1〜3か月です。

- 6. 就労開始と生活支援
- 入国(変更)後、生活オリエンテーションや給与口座開設、住民登録などの支援を実施します。

不許可を避ける実務的注意点
地方出入国在留管理局への申請において特に審査に落ちやすいポイントをご紹介します。
報酬設定の合理性
- 日本人との同等性
特定技能外国人の給与が、同等の経験を持つ日本人従業員と比較して低くないかが厳格にチェックされます。 - 昇給の明記
特定技能雇用契約および就業規則において、技能の習熟に応じた昇給規定があることを証明する必要があります。 - 残業代・手当の根拠
各種手当(住宅手当、通勤手当等)も日本人と同じ基準で支払わなければなりません。
過去の履歴との整合性
技能実習生時代に提出した履歴書や職歴、家族構成等と、今回の特定技能申請書類の内容に食い違いがある場合、虚偽申請とみなされ不許可となります。過去の申請データを確認することが不可欠です。
整備士資格の指導体制
受入れ事業場に、特定技能外国人を適切に指導監督できる日本人整備士(資格保有者)が配置されているかが重要です。また、雇用契約締結前1年以内に、同種の業務に従事する労働者をリストラ(非自発的離職)させている場合は、受入れが認められません。
特定技能2号への道:熟練整備士としての定着
自動車整備分野は、最上位資格である「特定技能2号」が認められている数少ない分野の一つです。
2号移行の要件
- 技能試験
「自動車整備分野特定技能2号評価試験」または「2級自動車整備士技能検定」への合格。 - 実務経験
認証工場における、分解整備等を含む整備実務経験3年以上。 - 指導能力
自身で作業判断ができ、他の要員への指導を適切に行える能力。
2号移行のメリット
在留期間の更新制限がなくなり、配偶者や子供を日本に呼ぶことが可能になります。これにより、人材の定着率が飛躍的に向上します。
採用の成功を「確実」なものにするために
自動車整備分野での特定技能の活用は、入管法と道路運送車両法が交差する、他分野にはない複雑さがあります。最新のルールを常に追い、膨大な書類を正確に揃えるのは、現場を抱える経営者様にとって大きな負担となりかねません。
経営者様や人事担当者様が本来の使命である「整備士の教育」や「現場の管理」に100%専念できるよう、煩雑な法務手続きについては行政書士などの専門リソースを上手く活用することも、採用を成功させる有力な選択肢の一つです。適正な準備こそが、新戦力を「工場の柱」へと育てる最短ルートとなるはずです。
【FAQ】特定技能自動車整備分野によくある質問
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二輪自動車(バイク)の整備は可能ですか?
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可能です。自動車整備の定義には二輪車も含まれており、認証工場の対象が二輪のみであっても受入れは認められます。
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特定技能外国人は「自動車検査員」になれますか?
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特定技能の資格そのもので検査員にはなれませんが、実務経験を積み、別途「自動車検査員」の資格を取得すれば、日本人と同様に従事可能です。
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整備作業の合間に、受付や会計をさせても良いですか?
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日本人整備士も日常的に行う範囲であれば「付随業務」として認められますが、受付専門のフロントスタッフとして配置することは禁止されています。
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特定技能外国人は転職できますか?
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可能です。ただし、自動車整備という同一業務区分内での転職に限ります。他の整備工場へ転職する場合、新たな企業と契約を結び直し、在留資格変更許可を受ける必要があります。
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日本語能力はどれくらい必要ですか?
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制度上の最低基準はN4以上ですが、整備指示書の読解や高度な診断機(スキャンツール)の使用には、N3程度の能力を目標に教育支援を行うことが推奨されます。
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