特定技能2号への移行要件とは? 家族の呼び寄せと1号との違い

特定技能制度は、深刻化する人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人人材を特定産業分野に限り受け入れることを目的に、平成31年4月から導入されました。この制度は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格に分かれており、特に「特定技能2号」は、企業にとって長期的な人材確保と育成の観点から、非常に注目度の高い在留資格です。
本記事では、特定技能2号への移行を目指す企業の人事担当者様に向けて、特定技能1号との違い、2号への移行に必要な要件、そして大きな魅力である「家族の呼び寄せ」について、制度や法令に詳しくない方にも分かりやすいように解説します。
特定技能制度の基本と特定技能2号への期待
特定技能制度は、日本の労働市場における人材不足を補うために創設された在留資格であり、特定産業分野に属する業務に従事する外国人に付与されます。
特定技能1号
特定産業分野において相当程度の知識又は経験を必要とする技能を持つ外国人向けです。これは、特別な育成や訓練をすることなく、直ちに一定の業務を遂行できる水準の技能を指します。
特定技能2号
、特定産業分野において熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けです。これは、長年の実務経験などにより身につけた熟達した技能であり、自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、あるいは監督者として業務を統括できる水準の技能が求められます
特定技能1号の在留者数は、令和7年8月末現在で35万人を超えていますが(速報値:350,706人)、特定技能2号の在留者数は4,407人にとどまっており(令和7年8月末現在、速報値)、これから本格的な移行・受入れが期待されています。
特定技能1号と2号の「決定的な違い」を徹底比較
特定技能1号と2号の最も大きな違いは、「在留期間の上限の有無」と「家族帯同の可否」です。これらは、外国人材が日本でキャリアを築き、生活基盤を安定させる上で極めて重要な要素となります。
1号と2号の重要な違いを理解するための比較表
以下の表は、特定技能1号と2号の主要な違いを分かりやすくまとめたものです。
| 項目 | 特定技能1号(特定技能外国人) | 特定技能2号(2号特定技能外国人) |
|---|---|---|
| 在留期間の上限 | 通算で上限5年(相当の理由がある場合は6年)。 | 更新回数に制限なし(実質的に長期の在留が可能)。 |
| 在留期間(1回ごと) | 1年を超えない範囲内で法務大臣が指定。 | 3年、1年、または6か月ごとの更新。 |
| 求められる技能水準 | 相当程度の知識または経験(即戦力レベル)。 | 熟練した技能(監督者レベル/高度な専門性)。 |
| 日本語能力水準 | A2相当(日本語能力試験N4レベル以上)。 | B1相当(漁業・外食業分野を除く)。試験での確認は基本的に不要。 |
| 家族の帯同(呼び寄せ) | 基本的に認めない。 | 要件を満たせば可能(配偶者、子)。 |
| 支援の義務 | 特定技能所属機関または登録支援機関による支援が必須。 | 支援の義務はない。 |
特定技能2号の魅力は「熟練」と「無期限」
特定技能2号は、外国人材が日本に永住する道(在留資格「永住者」)を目指す上での強力な足がかりとなります。
- 在留期間の上限なし
1号が通算5年という上限が設けられているのに対し、2号は在留期間の更新回数に制限がありません。これは、企業が熟練した人材を半永久的に雇用し続けることができることを意味します。 - 高い技能水準の証明
「熟練した技能」の証明は、日本人と同等またはそれ以上の高い専門性・技能を有していることを示すものであり、日本でのキャリアを確固たるものにします。
特定技能2号の最重要要件:求められる「熟練した技能」
特定技能2号の在留資格を得るためには、申請人が「熟練した技能」を有していることを証明する必要があります。
2号への移行に必要な共通要件
特定技能2号への移行(在留資格変更許可申請)を行うには、まず以下の共通基準を満たす必要があります。
- 18歳以上であること。
- 健康状態が良好であること。
- 特定の法令違反等がないこと(保証金の徴収等をされていないこと、送出国で定められた手続きを経ていることなど)。
また、特定技能雇用契約自体も、報酬額が日本人と同等以上であることなど、労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令等を遵守した適正な契約であることが前提となります。
移行の最大の関門:技能水準の証明
特定技能2号に移行するためには、従事しようとする業務に必要な熟練した技能を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていることが必要です。
具体的には、特定産業分野ごとに定められた特定技能2号評価試験に合格する必要があります。この試験は、技能検定1級相当の技能水準が想定されています。
特定技能2号独自の要件:実務経験のハードル
さらに、多くの分野で、単に試験に合格するだけでなく、一定期間の実務経験が要件として課されています。これは、熟練した技能が「長年の実務経験等により身につけた」ものと定義されているためです。
例えば、以下の分野では、試験合格に加えて実務経験が求められます。
宿泊分野
要件:宿泊分野特定技能2号評価試験の合格に加え、宿泊施設において複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務に2年以上従事した実務経験。
工業製品製造業分野
要件:製造分野特定技能2号評価試験(または技能検定1級)の合格に加え、日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験。
このように、特定技能2号では、単なる作業遂行能力だけでなく、指導や管理といった高度な業務を含む実務経験が求められます。
技能実習2号からの移行との関係(1号との大きな違い)
特定技能1号の場合
技能実習2号を良好に修了し、従事しようとする業務と技能実習の職種・作業に関連性があれば、技能水準試験および日本語能力試験が免除されます。このルートは、多くの技能実習生が1号へ移行する際の大きなメリットです。
特定技能2号の場合
技能実習2号を良好に修了したとしても、特定技能2号評価試験の免除規定は示されていません。特定技能2号への移行には、原則として、試験に合格し、かつ求められる実務経験を証明する必要があります。
技能実習2号の修了は、特定技能1号への移行準備として有効ですが、2号へのステップアップには、改めて高いレベルの試験に挑戦し、熟練度を証明しなければなりません。
家族を呼び寄せられる「家族滞在」制度の解説
特定技能2号の最も大きな魅力の一つは、配偶者と子を日本に呼び寄せ、一緒に生活できる点です。これは、長期的に日本での生活を希望する外国人材にとって、非常に大きな動機付けとなります。
家族滞在の在留資格
特定技能2号(2号特定技能外国人)の在留資格を持つ外国人が扶養する配偶者または子は、「家族滞在」の在留資格で日本に在留することが可能です。
一般的な就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能など)を持つ外国人は、配偶者と子を「家族滞在」として呼び寄せることが認められています。
一方で、特定技能1号の外国人は、家族滞在の対象となる在留資格から明確に除外されています。
特定技能2号は、この家族滞在の除外対象には含まれないため、配偶者と子を扶養者として呼び寄せることが可能となるのです。
家族滞在の要件と注意点
家族滞在の在留資格を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 【扶養関係】
申請人(配偶者または子)が、特定技能2号の外国人(扶養者)の扶養を受けて日本に在留すること。 - 【身分関係の証明】
扶養者との婚姻関係または親子関係を証明する文書を提出すること。 - 【扶養能力の証明】
扶養者(特定技能2号外国人)の職業及び収入に関する証明書を提出し、家族を扶養する経済力があることを証明すること。
特定技能2号の外国人が家族を呼び寄せられるということは、長期的なキャリアと生活の安定を意味し、結果的に企業が優秀な人材を日本に定着させるための強力な手段となります。
特定技能2号の対象産業分野
特定技能2号の対象となる分野は、特定産業分野(全16分野)のうち、熟練した技能が必要とされる業務の遂行が可能であると認められた分野です
最新の運用状況(令和6年9月30日時点)に基づくと、特定技能2号で外国人を受け入れることが可能な分野(11分野)と、特定技能1号のみが可能な分野(5分野)は以下のとおりです。
(参考資料:・外国人材の受け入れ及び共生社会実現に向けた取り組み ・特定技能運用要領)
特定技能1号・2号の受入れ対象分野一覧
| 特定技能1号・2号で受入れ可能な分野(11分野) | 特定技能1号のみで受入れ可能な分野(5分野) |
|---|---|
| 1. ビルクリーニング | 1. 介護 |
| 2. 工業製品製造業 | 2. 自動車運送業 |
| 3. 建設 | 3. 鉄道 |
| 5. 自動車整備 | 4. 林業 |
| 6. 航空 | 5. 木材産業 |
| 7. 宿泊 | |
| 8. 農業 | |
| 9. 漁業 | |
| 10. 飲食料品製造業 | |
| 11. 外食業 |
※上記11分野においては、特定技能2号の要件(熟練した技能+実務経験)を満たせば、在留期間の上限なく、家族帯同が可能となります。
特定技能2号への移行を成功させるための企業の役割
特定技能2号への移行は、外国人材本人に高い技能と実務経験が求められますが、そのキャリアアップを支援する特定技能所属機関(受入れ企業)の役割も不可欠です。
企業が整備すべき雇用環境の基準
特定技能所属機関は、特定技能外国人との雇用契約(特定技能雇用契約)において、以下の基準を満たさなければなりません。これらの基準は、1号・2号共通して求められるものです。
- 【報酬の適正性】
外国人材の報酬額が、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること。特に2号への移行を目指す人材は、熟練者として3年~5年程度の経験を積んだ日本人の技能者に支払っている報酬額と比較し、適切に設定する必要があります。 - 【差別的取扱いの禁止】
外国人であることを理由に、報酬の決定や福利厚生施設の利用などで差別的な取扱いをしてはならない。 - 【休暇の取得】
外国人材が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させることとしていること。特に家族滞在で家族が来日する場合、家族と過ごすための有給休暇を取得できるよう配慮する必要があります。 - 【帰国旅費の負担】
特定技能雇用契約が終了した際、外国人材が帰国旅費を負担できない場合には、特定技能所属機関が旅費を負担し、円滑な出国を支援すること。
これらの雇用契約の適正な履行に加え、企業自体も、労働、社会保険、租税に関する法令を遵守し、過去5年以内に出入国・労働法令違反がないことなどの基準を満たす必要があります。
特定技能2号移行は長期的な人材戦略の要
特定技能2号への移行は、外国人材のキャリアアップと日本での生活の安定を実現する上で、非常に重要なステップです。これにより、企業は在留期間の上限なく、熟練した優秀な人材を確保し続けることが可能になります。
特定技能2号への移行要件は、1号に比べて厳しく設定されており、特に熟練した技能の証明(試験合格と実務経験)と、家族帯同を可能にするための安定した雇用条件の確保が鍵となります。
特定技能2号の在留資格を取得することは、外国人材が日本でキャリアを積む上で「永住者」への道を開くことにも繋がるため、企業が長期的な人材戦略を構築する上で、最も重要なステップと言えるでしょう。
この特定技能制度の導入は、あたかも「即戦力として期待される優秀な外国人技術者」を日本社会に招き入れ、彼らが長期的なキャリアを築き、家族を呼び寄せることで、日本社会の一員として深く根を下ろすことを可能にする「種まきと育成」の仕組みに例えられます。1号で即戦力として活躍し(種まき)、2号で熟練した技能者となり、家族とともに安定した生活を送る(育成と定着)という一連の流れを、企業が支援していくことが求められています。
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特定技能2号への移行は、在留資格や雇用契約の要件が複雑で、特に実務経験の証明方法や、外国人材のキャリアパスの管理には専門的な知識が不可欠です。
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