特定技能「自動車運送業」採用ガイド|2024年問題を克服する新戦略

日本の物流・交通インフラは今、かつてない危機に瀕しています。いわゆる「2024年問題」により、トラックドライバーの時間外労働に上限が課され、輸送能力の不足が現実のものとなりました。
この深刻な事態への切り札として、2024年3月に特定技能制度の対象に「自動車運送業」が追加されました。
なぜ、この分野の追加が他の分野より遅れたのでしょうか。それは、不特定多数の命を預かる旅客運送や、公共性の極めて高い物流において、高度な安全管理能力、車両操作技能、そして緊急時に適切に対応できる日本語能力の担保が、他の産業以上に難しいためです。
入管法務に携わる行政書士として、単なる在留資格の許可申請代行にとどまらず、複雑な運送業関連法規との整合性や、長期的な戦力化を見据えた実務のポイントを、本マニュアルで徹底解説します。
対象となる3つの業務区分と実務の境界線
特定技能「自動車運送業」は、輸送対象や業務の性質に応じて大きく3つの業務区分に分かれています。
トラック(貨物自動車運送事業)
トラック運送は、日本の物流の9割を支える大動脈です。本区分では、一般貨物自動車運送事業(第一種・第二種)及び特定貨物自動車運送事業において、事業用自動車(トラック)の運転及びそれに付随する業務全般に従事します。
実務のポイント
単に運転するだけでなく、積込みや荷卸しといった「附帯業務」も、日本人が通常従事する範囲内であれば認められます。
注意すべきは、運転業務を行わず「一日中倉庫内での仕分けや荷卸しのみ」に従事させることは認められない点です。これは特定技能の趣旨である「技能を要する業務」の範囲を逸脱し、不許可や受入れ停止のリスクを招きます。
バス(一般乗合・一般貸切旅客自動車運送事業)
旅客運送の要であるバス区分は、路線バス(乗合)と観光バス(貸切)の両方を対象としています。
実務のポイント
運転技能はもとより、乗客の安全確保、車椅子利用者の乗降介助、緊急時の避難誘導能力が厳格に求められます。
また、乗客からの問い合わせや苦情に即座に対応する必要があるため、後述する通り「N3以上」の高い日本語能力水準が課されています。
タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)
タクシー区分は、流し営業だけでなく、予約営業や配車アプリへの対応、多種多様な決済実務までを含みます。
実務のポイント
単なる移動手段の提供にとどまらず、観光案内や高齢者の外出支援といった高度なサービス提供も視野に入っています。
また、タクシー特有の運賃収受や地理案内において、トラブルを未然に防ぐための教育体制が受入れ企業側に求められます。
外国人材に求められる「二重のハードル」
自動車運送業において、外国人材がクリアすべき壁は他分野よりも高く設定されています。
バス・タクシーに課される日本語能力「N3以上」
一般的な特定技能1号では「N4(基本的な日本語)」が基準ですが、自動車運送業のタクシー及びバス運転者については「N3以上」の合格が必須です。
これは、乗客とのコミュニケーション不全が重大な事故やトラブルに直結するという、旅客運送分野特有の事情に基づいています。トラック運転者は「N4以上」で足りますが、運行指示の理解には十分な習熟が必要です。
| 区分 | 日本語能力要件 | 理由 |
|---|---|---|
| トラック | N4以上 | 運行指示の理解や伝達が必要なため。 |
| バス・タクシー | N3以上 | 接客、苦情対応、緊急時の避難誘導が必要なため。 |
日本の第一種・第二種免許の取得
特定技能外国人として就労するためには、日本の第一種運転免許(トラック)又は第二種運転免許(バス・タクシー)の取得が前提となります。
外国免許からの切り替え(外免切替)も可能ですが、特に第二種免許の学科試験や実技試験は日本人でも難易度が高く、教習所での追加トレーニングなしでの一発合格は現実的ではありません。企業側は、入社前の免許取得期間を考慮した採用計画を立てる必要があります。
受入れ企業(所属機関)の厳格な「安全・コンプライアンス要件」
自動車運送業は、一歩間違えれば重大な人命事故に繋がるため、受入れ企業には極めて高いコンプライアンス水準が求められます。
安全評価の保持
受入れ企業は、以下のいずれかの認証・評価を受けている必要があります。
- Gマーク(安全性優良事業所)👉トラック運送事業者の安全性を評価する認定。
- 働きやすい職場認証制度👉運転者の労働条件や職場環境の改善に取り組んでいることの証明。
- 貸切バス選定制度👉バス事業者の安全性を格付けする制度。
これらの評価を維持していない、あるいは重大な事故を発生させた事業所は、特定技能外国人の受入れ資格を失うことになります。
運行管理の徹底
特定技能外国人を雇用する場合、運行管理者の配置と、アルコールチェッカーによる厳格な点呼、運行指示書に基づく適正な運行管理が義務付けられます。
また、特定技能所属機関は「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入が必須であり、国土交通省が行う調査や指導に全面的に協力しなければなりません。
就労ビザ共通の審査基準と企業の義務
分野固有の要件に加え、全ての就労ビザに共通する「企業の欠格事由(5年以内の法令違反なし)」「日本人と同等以上の報酬」「社会保険の適正加入」などの基準も厳格に審査されます。
詳細は、別記事『【就労ビザ共通】許可・不許可を分ける二大審査基準と企業の義務』を必ず併せてご参照ください。
特定技能2号への展望と、永住権を見据えたキャリア形成
自動車運送業においても、熟練技能を要する「特定技能2号」への移行が認められました。2号を取得すれば、以下の絶大なメリットを享受できます。
- 在留期間更新の制限なし👉実質的な定年までの雇用が可能になります。
- 家族帯同の許可👉母国の配偶者や子を呼び寄せることができ、生活基盤を日本に置くことが可能です。
- 現場指導員への登用👉2号人材は、将来的に外国人ドライバーを統括する「班長」や「運行管理の補助者」としての活躍が期待されます。
申請手続きのタイムスケジュールと注意点
自動車運送業の採用から入社までは、免許取得というプロセスが入るため、他分野より長期間を要します。
- 面接・内定
- 日本語試験(N3/N4)・技能試験合格
- 日本の運転免許取得(教習所・外免切替)👉約2〜4か月(個人差あり)
- 協議会加入届出・特定技能雇用契約締結
- 地方出入国在留管理局への申請👉標準処理期間1〜3か月
- 入社(運行開始)
総リードタイムの目安👉6か月〜1年 この期間を逆算し、2024年問題への対策を加速させる必要があります。
新しい物流・交通の担い手を育てるために
特定技能「自動車運送業」の導入は、単なる人手不足を埋めるための「安価な労働力」の確保ではありません。それは、日本の社会インフラを維持し、次世代へ繋ぐための「物流・交通のインフラを支える『新しい血(新戦力)』」の受け入れです。
手続きは複雑であり、安全管理のハードルは高いものですが、適正に運用し、1号から2号へとキャリアを積ませることで、貴社の将来を担う熟練ドライバーを育成することが可能となります。
制度の正しい理解と専門家によるサポートを活用し、コンプライアンスを遵守した攻めの採用戦略を構築してください。
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