特定技能【介護】外国人採用完全ガイド:試験・要件・手続きを解説

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優秀な外国人材の確保は、慢性的な人手不足に悩む介護業界にとって喫緊の課題です。特定技能ビザは、即戦力となる外国人を安定的に受け入れるための重要な制度です。

本記事では、特定技能「介護分野」の採用要件、外国人材がクリアすべき試験、そして申請手続きについて詳細に解説します。

特定技能「介護分野」が求められる背景とメリット

特定技能ビザは、我が国の介護サービスの安定的提供を目的として創設されました。この制度は、従来の在留資格とは異なる多くのメリットを提供します。

他の在留資格との違い

  • 技能実習が「人材育成による国際貢献」を目的とするのに対し、特定技能は「労働力の確保」が目的です。
  • EPA(経済連携協定)に基づく受け入れは、政府間の協定に基づいた年間受け入れ枠や特定のルートに限定されるため、採用活動の自由度は高くありません。
  • 一方、特定技能は国全体としての絶対的な受け入れ上限はなく、事業所ごとの制限(常勤職員数と同数まで)はあるものの、企業が比較的自由に採用活動を行える点で自由度が高いと言えます。
比較項目特定技能(1号)技能実習(団体監理型)
目的人手不足への対応(即戦力の確保)国際貢献(技能等の移転)
転職・転籍同一業務区分内等で可能原則不可(やむを得ない場合等を除く)
在留期間通算5年が上限最長5年(1号:1年以内、2号・3号:各2年以内)
支援義務受入れ機関または登録支援機関にあり監理団体にあり

在留期間とキャリアパス

  • 特定技能1号の在留期間は最長5年です。
  • その後、国家資格である「介護福祉士」を取得することで、在留期間が無期限となる在留資格「介護」へ移行し、永続的に日本での就労が可能です。

採用側(介護事業者)が満たすべき3つの要件

介護事業者(受入機関)が特定技能外国人を受け入れるためには、以下の3つの主要な要件を満たす必要があります。

1. 外国人が従事する業務の範囲

対象となる業務

  • 身体介護(食事、入浴、排泄の介助など)。
  • 付随する支援業務(レクリエーションの実施、居室の清掃など)。
Information

訪問介護業務について

介護分野の上乗せ基準告示の改正(令和7年4月21日)により、訪問介護等の業務への従事が認められる場合があります。その場合、受け入れ機関は、以下の事項を遵守する必要があります。

  1. 実務経験等を有する1号特定技能外国人のみを当該業務に従事させること。
  2. 当該業務の基本事項、生活支援技術、利用者等とのコミュニケーションなど、必要な知識及び技能を習得させる講習を行うこと。
  3. サービス提供を一人で適切に行えるようになるまでの一定期間、責任者等が同行するなどの必要な訓練を行うこと
  4. ハラスメント防止のための相談窓口の設置等の措置を講ずること。

なお、特定技能外国人を労働者派遣の対象とすることは、特定技能制度全体の原則として認められていません。ただし、農業分野及び漁業分野においては、分野の特性に応じて例外的に労働者派遣が認められています。

介護分野においては、令和7年4月21日より、一定の要件(実務経験、講習、訓練等)を満たした特定技能外国人材は、訪問介護業務自体に従事することが可能となりますが、その雇用形態は直接雇用に限られ、労働者派遣の対象とすることはできません。

2. 雇用条件の適正性

  • 報酬: 雇用する外国人の報酬額は、同等の業務に従事する日本人従業員が受け取る報酬と同等以上であることが必須です。
  • 法令遵守: 労働基準法、社会保険各法など、各種労働関連法令を遵守した雇用契約を結ぶ必要があります。
  • 休暇: 外国人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させることが契約で定められていなければなりません。
  • 禁止事項: 外国人またはその親族等に対し、保証金の徴収、その他金銭の管理をしてはならず、また、違約金を定める契約を結んではなりません。これらの禁止行為は、事業者自身の欠格事由にもつながります。

3. 支援体制の構築(支援計画の策定)

  • 特定技能外国人が安定して活動できるよう、生活オリエンテーションや公的手続きのサポートなど、10項目にわたる義務的な支援を行う体制が必要です。
  • この支援は、登録支援機関に委託するか、自社で実施する体制を整えなければなりません。

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人が活動を安定的かつ円滑に行えるようにするための「職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援」を実施する義務があります。

この義務を果たすため、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、入管へ提出しなければなりません。

支援の実施主体支援は、受け入れ機関が自ら実施することも、登録支援機関に全部または一部の実施を委託することも可能です。
全部委託のメリット支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託する場合、特定技能所属機関は、支援体制に関する基準(支援責任者の選任や言語体制など)を満たしているものとみなされます
自社支援の要件自ら支援を行う場合は、過去2年間に就労資格の外国人材の受入れや管理を適正に行った実績があること、または役職員が過去2年間に生活相談業務に従事した経験があることなど、支援を適正に行うための体制が整っていることが必要です。
また、支援責任者と支援担当者は、外国人に対する指揮命令権を有しない中立的な立場の者でなければなりません
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就労希望者(外国人)が満たすべき2つの技能要件

特定技能「介護分野」での就労を目指す外国人材は、原則として以下の2つの水準をクリアしなければなりません。

要件評価される水準該当する主な試験
技能水準介護業務に必要な知識と技術を有していること。介護技能評価試験の合格
日本語能力水準日常生活や業務に必要な日本語能力を有していること。国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) または 日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格

上記の表のように、特定技能「介護」分野では、日常会話レベルの証明介護現場特有の日本語能力の証明するために2つの試験に合格することが必要となります。

特例(試験免除)

技能実習2号を良好に修了した外国人材は、上記の技能水準試験および日本語能力水準試験の両方が免除されます。

特定技能ビザ申請手続きのステップと入管審査の注意点

特定技能の在留資格を取得するための手続きは、外国人材が「海外から新規に入国する」場合と「日本に在留中(留学生や技能実習生など)で在留資格を変更する」場合で流れが異なります。

申請の流れ

1. 採用・雇用契約の締結
技能・日本語能力の確認(試験合格等)後、特定技能雇用契約を締結します。この際、報酬が日本人と同等以上であることなど、法令適合性を確保します。
2. 支援計画の策定
特定技能所属機関または登録支援機関が、1号特定技能外国人支援計画を作成します。
3. 入管申請:海外から採用(新規入国)の場合
特定技能所属機関の職員等が代理人となり、在留資格認定証明書交付申請を地方出入国在留管理局に行います。交付後、外国人が在外公館で査証(ビザ)を申請し、入国します。
3. 入管申請:国内で採用(在留資格変更)の場合
外国人本人が、原則として在留資格変更許可申請を地方出入国在留管理局に行います(オンライン申請、または申請取次者による代行申請も可能)

入管審査の注意点

入管は、事業者側の労働条件の適正性と、策定された支援計画の実行可能性を厳しく審査します。特に、支援体制が名目だけで実効性がないと判断された場合、不許可となる可能性が高まります。

登録支援機関の役割と行政書士によるサポート

登録支援機関の役割

登録支援機関は、特定技能外国人が日本で安定した生活を送れるよう、受入機関に代わって以下の10項目にわたる義務的な支援を行います。

  1. 入国前の生活オリエンテーション
  2. 空港への送迎、住居の確保
  3. 生活に必要な契約(銀行口座開設、携帯電話など)のサポート
  4. 日本語学習機会の提供
  5. 公的手続き(役所など)の同行支援
  6. 相談・苦情への対応
義務的支援(10項目)を詳しく知りたい方は▼をタップしてください。
  1. 事前ガイダンス: 契約内容や入国手続き、保証金徴収の有無など、日本での生活に留意すべき事項を、在留諸申請前に外国人が十分に理解できる言語で対面またはテレビ電話等で説明します。
  2. 出入国時の送迎: 入国時および帰国時に空港等への送迎を実施します。
  3. 住居確保・生活に必要な契約支援: 賃貸借契約の保証、預金口座の開設、携帯電話の利用契約、ライフライン契約などの手続きを案内・補助します。
  4. 生活オリエンテーション: 日本のルールやマナー、公共機関の利用方法、緊急時の対応、法的保護に必要な情報など、円滑な社会生活に必要な情報を提供します。
  5. 公的手続き等への同行: 必要な場合、住居地・社会保障・税などの手続きのため、関係機関への同行や書類作成の補助を行います。
  6. 日本語学習の機会の提供: 日本語教室等の入学案内や学習教材の情報提供などを通じて、日本語学習を支援します。
  7. 相談・苦情への対応: 職業生活上または生活上の相談・苦情に対し、外国人が理解できる言語で対応し、必要な助言、指導を行います。
  8. 日本人との交流促進: 地域住民との交流の場や行事の案内、参加の補助などを通じて交流を促進します。
  9. 転職支援(人員整理等の場合): 受入れ側の都合により雇用契約が解除される場合の転職先探しや推薦状の作成、求職活動のための有給休暇付与の案内、必要な行政手続きの情報提供などを行います。
  10. 定期的な面談・行政機関への通報: 支援責任者等が、外国人およびその上司等と3か月に1回以上定期的に面談し、労働基準法違反等の問題があれば関係行政機関に通報します。

行政書士の役割

行政書士は、外国人本人、または雇用主である特定技能所属機関からの依頼に基づき、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請などの煩雑な申請手続きを代行(申請取次)することができます。

この入管への申請取次は、日本行政書士連合会が定める一定の研修を受け、地方出入国在留管理局に届出済みの行政書士のみが行うことができます。

※届出済みの弁護士も入管への申請取次を行うことができます。

複雑な法令や基準の確認(特に報酬の同等性、支援体制の基準適合性など)を含め、正確な書類作成と適切な申請を行うことで、事業者側の負担を大幅に軽減し、許可の確実性を高めることができます。法令遵守の体制構築から支援計画の策定まで、専門家として一貫したサポートを提供します。

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【まとめ】介護分野の特定技能採用は「継続的な支援」が成功の鍵

特定技能「介護分野」の採用を成功させる鍵は、単にビザを取得することではなく、外国人材が安心して働き続けられる「継続的な支援体制」を構築することにあります。

入管法の専門家である行政書士に相談いただくことで、法的なリスクを回避し、貴社の戦力となる外国人材をスムーズかつ確実に受け入れるためのサポートを提供いたします。

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