家族滞在ビザ完全ガイド:申請要件、就労可否、生計維持の注意点

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外国人採用において、本人の在留資格だけでなく、家族が日本で安定して暮らせるかどうかが定着の鍵となります。

配偶者や子を呼び寄せる際に必要となる「家族滞在ビザ」は、一見シンプルですが、特に「生計維持能力」の審査が厳しく、準備を怠ると不許可のリスクが高まります。入管業務を専門とする行政書士として、家族滞在ビザの申請要件と、不許可事例から学ぶべき注意点を詳細に解説します。

家族滞在ビザの基礎知識と対象者

「家族滞在」の在留資格は、日本に在留する外国人が、その家族(配偶者または子)を本国から呼び寄せ、日本国内で扶養を受けて日常生活を送ることを目的とした在留資格です。

家族滞在の対象者

「家族滞在」ビザの申請対象となるのは、日本に在留する外国人(扶養者)の配偶者およびです。ここでいう「子」には養子が含まれますが、扶養者の親(父母)は「家族滞在」の対象者には含まれませんので、ご注意ください。

扶養者となる外国人が保持している在留資格は、就労系(例:「教授」「経営・管理」「研究」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「技能」「企業内転勤」など)や「留学」などの活動資格です。

項目詳細注意点
対象者(家族)日本で就労系・留学の在留資格を持つ外国人の配偶者および親(父母)、兄弟姉妹は原則として対象外です。
扶養者(本人)のビザ例技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、留学、経営・管理など技能実習特定技能1号は、原則として家族帯同は認められていません。
活動範囲扶養者(本人)の扶養を受け、日常生活を行う活動。就労は原則不可(別途、資格外活動許可が必要)。

家族滞在ビザ取得のための2つの主要な要件

家族滞在の在留資格を取得するためには、主に「身分関係の証明」「生計維持能力の証明」という、二つの大きな柱となる要件をクリアする必要があります。

1. 身分関係の証明

申請人(配偶者または子)と扶養者(日本に在留する外国人)との間に、法律上の真実の身分関係があることを立証しなければなりません。

具体的な提出書類

  • 婚姻を証する文書: 配偶者の場合、婚姻の事実が記載された戸籍謄本、婚姻受理証明書または婚姻証明書など。
  • 親子関係を証する文書: 子の場合、権限を有する機関が発行した出生証明書や戸籍謄本など。

2. 生計維持能力の証明

家族滞在ビザの審査において、最も厳格かつ重点的に審査されるのが、扶養者による「生計維持能力」の有無です。

この在留資格の目的は、扶養者の扶養を受けて在留することであるため、扶養者(外国人本人)の収入のみで、日本に在留する家族全員の生活費を現実に支弁できることが必須とされます。

審査の厳格性

審査においては、扶養者が安定した収入を継続的に得ており、世帯全体の生活に支障がないかを判断します。

  • 提出書類: 扶養者の職業及び収入を証する文書(直近の源泉徴収票、住民税又は所得税の納税証明書、確定申告書控えの写し等)の提出が必須です。
  • 資産による立証: 扶養者の収入がまだ安定していない場合や、留学ビザなど扶養能力の審査が特に厳しい在留資格の場合には、十分な資産(預金残高証明書など)や奨学金等の存在をもって、本邦滞在中の経費を現実に支弁できることを立証する必要があります。

扶養家族が増えるほど、必要とされる収入水準も高くなるため、企業の人事担当者様においては、外国人従業員が家族を帯同する際には、その経済的な基盤が十分であるかを確認し、適切な給与水準や雇用形態を維持しているか、慎重にサポートすることが求められます。

就労ビザと家族滞在ビザの在留資格認定証明書を同時に申請する場合の生計維持能力の証明はどうする?

新規に日本の企業に就職する外国人(扶養者)が家族滞在ビザを同時に申請する際、生計維持能力の証明で最も重要となるのは、将来の安定的な収入です。

主要な証明資料(将来の収入):扶養者はまだ日本で給与を得ていないため、「日本の雇用主(所属機関)」が作成する、日本での就労によって今後得られる報酬に関する証明が核となります。

  • 雇用契約書・雇用条件書の写し
  • 報酬の適正性の説明書類など

過去の収入証明(本国での実績)の役割:本国での収入証明は主要な証明資料とはなりませんが、以下の点で補完的な役割を果たします。

  • 資産証明の補強
  • 在職状況の証明

新規就職による家族滞在ビザ申請において、生計維持能力を証明する核となるのは、「日本の企業との雇用契約に基づき得られる将来の安定した報酬」であり、過去の収入はあくまで補強資料としての役割となります。

家族滞在ビザでの就労と資格外活動許可

「家族滞在」の在留資格は、その活動内容に就労が認められていません。これは、家族が日本で働くことを主目的としているのではなく、扶養者の扶養を受けることを前提としているためです。

就労の原則と資格外活動許可

「家族滞在」の在留資格を持つ者が日本で報酬を受ける活動(就労活動)を行うためには、必ず事前に法務大臣(出入国在留管理庁長官)の「資格外活動許可」を受ける必要があります。

厳格な時間制限

資格外活動の許可を受けたとしても、就労活動は原則として「1週について28時間以内」の活動に限定されます。

この制限は、以下の要件を満たすために設けられています。

  1. 本来の在留活動の維持: 就労活動が、本来の在留目的である「扶養を受ける日常的な活動」の遂行を阻害しない範囲内であること。
  2. 活動内容の制限: 法令で禁止されている活動や、風俗営業、店舗型性風俗特殊営業など公序良俗に反するおそれのある活動でないこと。

この週28時間という上限は、家族滞在の在留資格を維持するための絶対的なルールであり、これを超えた就労が確認された場合、重い行政処分につながる可能性があります。(複数のアルバイト・パートを掛け持ちしている場合、全てのアルバイト・パートについて、どの曜日から数えても1週28時間以内であることが必要です。)

項目制限内容注意事項
原則就労はできません。収入を得る活動は原則禁止です。
就労の可否資格外活動許可を取得すれば可能。事前の許可なしに働くと不法就労となり、強制退去や在留資格剥奪の原因となります。
時間制限許可取得後も、週28時間以内扶養者(本人)の活動を妨げるほどの活動は認められません。この時間制限の超過は、更新時の不許可事由となります。

家族滞在ビザが不許可・困難になりやすい事例

在留資格の申請または更新が不許可となる典型的な事例は、主に「生計維持能力の不足」または「資格外活動の法令違反」に集約されます。

年収要件の不適合

扶養者が提示する収入が、扶養家族全員の生活を支えるには不十分であると判断される場合、不許可となります。

  • 扶養者の収入不足: 扶養者の収入額が、家族の人数や住居費などを考慮した生活水準に見合っていない場合。
  • 証明書類の欠如・信憑性: 収入を証明する書類の提出がない、または記載内容に信憑性がないと疑われる場合。
  • 公的義務の不履行: 扶養者または申請人が納税義務や社会保険料の納付義務を適切に履行していない場合、これは素行不良などの消極的な要素として評価され、許可が困難になることがあります。

資格外活動の超過

最も重大な法令違反の一つが、週28時間の上限を超えて就労することです。

  • 超過労働の事実: 配偶者または子が週28時間を超えて継続的に報酬を受ける活動をしていたことが判明した場合、本来の在留目的を逸脱していると見なされ、在留期間の更新申請が不許可となる可能性があります。
  • 資格外活動許可の不取得: 許可を取得せずに就労した場合(不法就労)は、在留資格の取消し退去強制の対象となり得るため、極めて厳重な注意が必要です。

家族帯同の優遇措置がある在留資格との比較

「家族滞在」ビザは、活動に制限がある一方で、就労系や身分系など、他の在留資格では家族の在留に関して大きな優遇措置が設けられています。

高度専門職ビザとの比較

高度な専門的知識や能力を持つ外国人材に付与される「高度専門職」の在留資格は、家族の在留において「家族滞在」を遥かに上回る優遇措置が適用されます。

在留資格在留期間配偶者の就労親の帯同家事使用人の雇用
家族滞在最長5年週28時間以内(許可制)不可不可
高度専門職1号5年(一律)一部職種でフルタイム就労可要件を満たせば可要件を満たせば1人まで可
高度専門職2号無期限ほぼ全ての就労資格の活動が可能要件を満たせば可要件を満たせば2人まで可

特に、親の帯同は、世帯年収800万円以上などの要件を満たし、7歳未満の子の養育や妊娠中の配偶者の介助等を行う場合に、扶養者またはその配偶者の父母のいずれか一方について認められる特例です

また、高度専門職は、永住許可申請に必要な在留期間が大幅に緩和され、70点以上で3年、80点以上で1年の在留実績で申請が可能となります。

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永住者・日本人の配偶者等との比較

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」居住資格です。

これらの在留資格を持つ者の家族は、その身分・地位に基づき在留するため、「家族滞在」ビザの家族とは異なり、就労活動に制限がなく、どのような職種に就く場合でも資格外活動許可は不要となります。

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他の家族帯同の在留資格との違いと注意点

特定活動との比較

扶養者が「特定活動」の在留資格で在留する場合、その家族も「家族滞在」の在留資格を取得することができます。

「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行う在留資格であり、報酬を受ける活動が可能かどうかは個々の許可内容によって決定されます

特定活動の中には、その活動計画の性質上、他の在留資格への変更を予定していないものがあります。例えば、「インターンシップ」「サマージョブ」、「EPA看護師候補者・介護福祉士候補者(研修途中)」といった活動は、活動計画の途中で他の在留資格へ変更することが原則として認められません。

扶養者自身の在留活動が厳しく制限される場合、その家族である「家族滞在」の在留も同様に厳しい管理下に置かれることになります。

定住者との比較

「定住者」の在留資格は、活動に制限がなく自由に就労できます

ただし、「定住者」は、日系3世や中国残留邦人等、特別な理由を考慮された限定的な地位に基づき付与される在留資格であり、対象者が限定されます。

留学ビザとの比較

扶養者である外国人が「留学」の在留資格で在留する場合、その家族は「家族滞在」ビザの対象となります。

「留学」の在留資格自体、本邦での生活費を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有することが求められる在留資格です。そのため、扶養者が留学生の場合、家族滞在ビザの生計維持能力の審査は、就労系在留資格の扶養者と比較して、より厳格に行われる傾向があります。

扶養者(留学生)の学校における在籍状況が不良である場合、在留資格の更新や他の在留資格への変更が許可されない可能性が高く、家族の在留も連動して不安定になることに注意が必要です。

家族帯同の成功は「計画的な生計維持」が鍵

「家族滞在」ビザの取得・維持は、扶養者である外国人本人と、彼らを雇用・支援する企業の人事担当者様にとって、扶養者の「計画的な生計維持能力」の確立と維持、そして家族全員による法令遵守が成功の鍵となります。

特に、以下の二点を徹底することが重要です。

  1. 収入の安定と証明: 扶養者自身の収入で、家族が「扶養を受けて生活する」ための経済的基盤が盤石であることを、適切な収入証明書類をもって立証し続けること。
  2. 資格外活動の厳守: 家族が働く場合は、必ず「資格外活動許可」を取得し、週28時間以内の制限を厳格に遵守すること。これを超過した就労は、在留資格取消しのリスクを高めます。

家族の帯同を確実に成功させるためにも、事前に専門家である行政書士に相談し、適切な収入証明や書類の準備を行うことが、最も確実な戦略と言えるでしょう。

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